変えられた運命「世界報道写真展2017」
東京都目黒区にある東京都写真美術館は、今年で総合開館20周年を迎える。
そんななか、2017年6月10日から世界報道写真展2017が開催された。
世界報道写真展とは、毎年100会場で開催されている世界最大規模の写真展である。
今年で60回目を迎えるこの写真展は、本展覧会を開催するにあたり125の国と地域から5,034人のフォトグラファーが参加し、計80,408点もの写真が集まった。
そしてそのなかから、8つの部門25カ国から45人が受賞した。
本展覧会を構成する8つの部門は、次のとおりだ。
・「スポットニュース」の部
・「一般ニュース」の部
・「人々」の部
・「現代社会の問題」の部
・「日常生活」の部
・「長期取材」の部
・「自然」の部
・「スポーツ」の部
人は誰でも平等に、そして自由に世界を知る権利がある。
本記事では、「日常生活」の部に焦点をあてて見どころを紹介する。
テレビや新聞では語られない、市民の「今」を知る
8つの部のうち6つの部を占めているのは、世界各国の「一般市民の姿」である。
写真には、イスラム過激派組織によって被害を受けた全く罪のない市民の悲惨な今や、フィリピンのロドリコ・ドゥテルテ大統領による過度な麻薬撲滅作戦から起因した殺人事件、アメリカで起きた黒人への警察官の暴力に抗議する市民などが写されている。
ポーラ・ブロンスタインが捉えた「日常生活」の部の1枚。
白いヒジャブを被った女性が、小さな子供を抱き抱えたまま、子供から目を逸らすように顔を左へ向け俯いている。
彼女の右腕は子供をしっかりと抱えながら、左手で自身の頭を支えている。
子供はただ眠っているだけのように見えるが、ぐったりと頭を落としている。
その構図は偶然かもしくは意図的になのか、西洋美術史においてマンテーニャやレオナルド・ダ・ヴィンチなどが描いてきた聖母マリアとイエスが描かれた『誕生』、そして『ピエタ』のように、三角型の構図をとっている。
その効果もあってか、悲惨な写真にも関わらず、どこか神聖さを感じてしまう作品だ。
この写真は、アフガニスタンのカプールで撮られた1枚である。
アフガニスタン戦争(2001年~2014年)は表向きには終結しているが、現在も米国などの国際部隊とタリバーンとの衝突が続いている。この子供は、その爆風被害に遭い亡くなったのだ。通学中のことだった。
「日常生活」の部では、メディアでは伝えられていない「今」を知ることができる。
そして、静寂のまま永遠に閉じられているからこそ「写真」は見る者の心に、写された者の「生身の感情」を伝えることができるのではないだろうか。
正義を見せるわけでもなく、悪を見せるわけでもない。
ただそこにある、「真実」だけを見せている。
映像ではどうしても他人事のように見えていた現実も、写真では一対一で向き合うことになり、より一層、事実が事実として、見る者の心に色濃く焼き付いてくる。
写真のむこう側にいる目は、間違いなく私たちの目に「真実」を訴えている。
そしてそれを可能としているのは、5,000人以上ものなかから入選された45人の写真家の見せる技でもあるのではないだろうか。
あなたもきっと、心を動かされるはずです。
世界報道写真展2017で、世界で起きている「今」を確かめに行きませんか?
【概要】
変えられた運命「世界報道写真2017」展
開催期間:2017/06/10~2017/08/6
開館時間10時00分~18時00分(木・金は20時00分まで)入館は閉館の30分前
休館日:毎週月曜日
観覧料:一般800円/学生600円/中高生・65歳以上400円
東京都写真美術館
東京都目黒区三田1‐13‐3恵比寿ガーデンプレイス内
JR恵比寿駅東区地より徒歩約7分
東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分
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